シンポジウム実施報告

良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業に係る総合的検討事業

令和元年度

シンポジウム実施報告

2020年7月1日

ニッセイ基礎研究所

令和元年度住宅ストック維持・向上促進事業「良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業」に関するシンポジウムの開催について

国土交通省では、良質な住宅ストックの活用を図るため、長期優良住宅や住宅性能表示、瑕疵保険、インスペクション、住宅履歴等の住宅の性能の確保や客観的な評価に係る各種制度の整備を進めてきました。

住宅ストック維持・向上促進事業「良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業」は、これらの制度を活用し、維持管理やリフォームの実施などによる住宅の質の維持向上が市場において適正に評価されるような、住宅ストックの維持向上・評価・流通・金融等の一体的な仕組みを開発・普及等する取組に対して支援を行う事業であり、平成28年度から行われています。

これまでの取組みを広く情報発信するため、総合的検討事業を行う株式会社ニッセイ基礎研究所は、今年度もシンポジウムを次の通り開催いたしました。

令和元年度のシンポジウムは、団地再生、中心市街地再生など、都市スケールの再生プロジェクトに取り組んでいる株式会社ブルースタジオ専務取締役クリエイティブディレクター大島芳彦氏、及び消費者の変化について知見を蓄積したSUUMO編集長兼SUUMOリサーチセンター長池本洋一氏を講師に迎え、実例をまじえた話をしていただきました。

また、本事業において先進的な取り組みを行っている5つの協議会等から、開発した仕組み及び行っている試行事業の内容について紹介してもらいました。協議会等の発表資料は本ホームページからダウンロードすることができます。

1―シンポジウム実施概要

  1. 日時・場所
    開催日時:令和2年1月15日(水)14:00~17:00(13:30開場)
    開催場所:大手町フィナンシャルシティ・カンファレンスセンターホール1・2
  2. プログラム
    ①開会・主催者挨拶
    14:00~14:05
    ②第1部 基調講演
    14:10~15:00
    • ・令和元年度における各協議会等の取組について
        株式会社ニッセイ基礎研究所塩澤誠一郎氏
    • ・講演❶選ばれる住宅、選ばれる街
        株式会社ブルースタジオ大島芳彦氏
    • ・講演❷良質ストックの「良質の本質」
        株式会社リクルート住まいカンパニー池本洋一氏
    ③第2部 各協議会等の取組紹介
    15:10~16:00
    • ・北海道R住宅ストック流通推進協議会
    • ・一般社団法人住宅流通促進協議会
    • ・一般社団法人長寿命住宅普及協会
    • ・静岡ストックハウス流通促進協議会
    • ・ながさき住まい価値向上促進協会
    ④第3部 意見交換
    16:05~16:40
    • ・株式会社ブルースタジオ大島芳彦氏
    • ・株式会社リクルート住まいカンパニー池本洋一氏
    • ・〈コーディネーター〉株式会社ニッセイ基礎研究所塩澤誠一郎氏
    ⑤質疑応答・閉会
    16:40~17:00
     

2―参加実績

当日は、136名が参加しました。内訳は次のとおりです。

令和2年度シンポジウム参加者数

  事前登録者数 参加者数 参加率 当日参加者 合計参加者数
一般参加者 97名 68名 70.1% 5名 5名
団体関係者 39団体 23団体(48名) 59.0% 23団体(48名)
報道関係者 2名 1名 50.0% 1名 2名
関係者 13名
合計 136名

3―講演、取組紹介、意見交換内容の概要

  1. 基調講演

    第1部基調講演では、最初に総合的検討事業者の株式会社ニッセイ基礎研究所、塩澤都市政策シニアリサーチャーが、本事業の経緯、現在の取り組み状況を紹介した上で、今年度実施した団体ヒアリングや現地調査を通じて見えてきた課題と方向性として、空き家所有者など将来の売却検討者へ訴求するアプローチ方法、賃貸という選択肢で空き家所有者に流動化を促すこと、買主の住宅取得行動に合わせた仕組の周知を提案しました。

    次に、株式会社ブルースタジオ、大島氏は、「選ばれる住宅、選ばれる街」と題して、人口減少社会では、空き家は資源であり社会的共通資本、空き家を積極的に活用対象にすることで、社会的な資源になる、住宅単体ではなく、住宅の集合体である地域に価値があると述べ、これまでに手がけた既存住宅のリノベーション事例や空き地活用事例を紹介しながら、地域の空間資源ばかりでなく、人的資源の掘り起こしと活用を行い、住民同士のコミュニケーションを生むことが地域価値の向上になること、住宅などの空間資源を、住宅所有者や住民が当事者として参加可能な場に再生し、地域の資産として活用することの重要性を提示しました。

    「良質ストックの『良質の本質』」と題した、株式会社リクルート住まいカンパニーの池本氏の講演では、はじめに、2030年の住宅マーケットが、住宅着工は大幅に減少するが、仕事の流動化で移動量はそ3れほど減らないことれほど減らないことからから、そのような状況下で今後のストックの有効活用において賃貸、そのような状況下で今後のストックの有効活用において賃貸住宅住宅の重要性がの重要性が増していく増していくだろうとだろうと予想を示しました予想を示しました。。

    次に、SUUMOの調査結果などを用いて、現在の消費者のリノベーションに対する認知度が高いこと、中古物件取得希望者は住宅性能より見た目の良さに注目すること、一方、賃貸入居希望者は入居前に設備、内装に注目するが、入居後は遮音性能や断熱性能の改善を希望すると指摘し、中古住宅の良質化においては性能面ばかりでなく、見た目の良さにつながる改善の重要性や、賃貸に長く住んでもらうためには、性能改善による良質化が必要になることを説き、その点を踏まえた上で良質な賃貸住宅ストックは長期的にみて競争優位であると結論づけました。

    また、既存住宅ビジネスの悩みと可能性として、買取再販のユーザーメリットが大きいことを指摘しつつ、現在の戸建住宅市場における買取再販では、ローコスト化を徹底するか、よりハイプライスゾーンを狙うのか、どちらかの戦略が求められると指摘するとともに、そうするためには、買い取った後のリフォーム工事にコストが掛からない物件を見極めることが重要で、その困難性が買取再販の難しさであるという認識を示しました。

  2. 各協議会等の取組紹介

    5つの団体から、それぞれの取組について、取組の背景と目的、仕組の開発に当たっての課題と対応方針、課題に対する工夫を含めた仕組の概要を紹介しました。さらに、試行を実施している団体は、試行を実施して理解できたことや今後の課題を紹介し、これから試行に取り組む予定の団体は、試行によって明らかにしたいことについて述べました。

    ここでは特に、今後の取り組みの参考になると思われる、各団体の試行を実施して理解できたこと、試行によって明らかにしたいことについての発表内容を取り上げて、以下に紹介します。

    「北海道R住宅ストック流通促進プロジェクト」
    北海道R住宅ストック流通促進協議会服部倫史氏
    ユーザーは「戸建て住宅の新築または建替」、「新築マンション」と、「北海道R住宅」を同列で考えている。北洋銀行と開発した新築と全く同じ条件の住宅ローンがあることによって、顧客は新築と同列に、自分のライフスタイルに合わせて、北海道R住宅を選ぶことができる。中古も十分選択肢に入る時代になった。
    「強くて美しい家は資産価値を保つ~ソーシャルグッド住宅周知・試行事業」
    一般社団法人住宅流通促進協議会工藤英寿氏
    良質化した中古住宅取引において、再調達原価法や取引事例比較法だけではない査定の評価方法が有効に機能することを発見した。性能も価格も魅力ある中古住宅の選択肢が用意されていれば、十分流通可能であり、中古住宅を選択肢の一つにする文化が根付いていくのではないか。
    「長寿命住宅認定に損害保険を組み合わせた『住宅価値保証システム』による維持・向上促進プロジェクト」
    一般社団法人長寿命住宅普及協会目黒浩氏
    仕組を提供できる金融機関が限られていることを顧客から指摘された。仕組を利用しやすくするためには、多くの金融機関に参加してもらう必要がある。また、きちんとメンテナンスをしていけば、価値が残ることを、消費者に分かっていただくための情報発信が必要。工務店もそれをきちんと説明できる提案をしなければならない。
    「静岡ストックハウス流通促進協議会OSS」
    静岡ストックハウス流通促進協議会大端将氏
    試行の実施については苦労しており、きちんとやり切れていないので、これから、とにかく実施していかなければならない。いろいろな理由で既存住宅の話題はなかなか出てこないので、やはり周知からしていかなければならない。
    「長崎の住まいに長寿の折り紙付きオリガミプロジェクト」
    ながさき住まい価値向上促進協会楢原英明
    今後試行を通じて、課題の抽出や改善策を検討していきたい。さらにメンテナンス費用の効果的な運用方法も検討を引き続き行っていく。
  3. 意見交換

    第3部意見交換では、最初に両講師から第2部の団体発表の中で気になった点、共通した課題などについてコメントいただき、関連して発表した団体に質問するなどして進めました。

    その後、良質住宅ストックの形成に向けて、池本氏と大島氏でつぎのようなやり取りがありました。

    〈モデルハウスについて〉
    • 池本氏:既存住宅のモデルハウスを設けて、ワンストップで説明でき、見ることができる場所は普及に有効ではないか。
    • 大島氏:空間や設備などハード面に対する実感以上に大事なことは、この住宅で得られる、どのような生活環境に満足したのかを追体験することだ。一般的なモデルハウスにはそれがないが、実践した人に話を聞くことはできる。
    • 池本氏:すべてきれいにした状態にするのではなく、あえて状態が悪い構造部を見せて、補強すれば問題ないことを示すのも、消費者にとって興味深いのではないか。
    〈消費者への訴求について〉
    • 池本氏:ブルースタジオのプレスリリースの打ち出し方は秀逸だ。社会課題を最初に出す。今、このような問題に対して、どのような課題を感じて、それをどのように解決しようとしたかという、社会課題の読み解き方と、解決の仕方が書いてある。社会課題というとメディア受けが良い。メディアに取り上げてもらうことで広告色なくフラットに伝わって、いい会社と認識される。
    • 大島氏:どうやったら共感の連鎖が起きるのだろうかということを、本来であれば、生活者や消費者の方に直接伝えなければいけないのだけれども、私たちが伝えたいことを一旦メディアの方が通訳して語ってくれるので、メディアが語りやすいようにするべきだ。その際、社会課題が重要で、他のメディアが伝えない切り口や語り口で伝えることが大事。
    〈エシカルであること〉
    • 大島氏:リノベーション、既存住宅の活用は、社会的、倫理的であることをメッセージしやすい。その辺りをもっと意識した消費者とのコミュニケーションを取り入れるべきだと思う。これから住宅を選ぼうとしている人に、新築ではなく、既存住宅を買うのは、これだけ環境にメリットがあって、自分の満足ではなく、それを選択していることがこれだけ正しい、倫理的なのだということを伝えていくことは大事なことだ。

    次に、冒頭塩澤が提示した課題と方向性に関連して、「講師に聞きたいこと」を示し、会場からの質問も含めながら、両講師から、次のような具体的なアイデアや提案を示していただきました。

    ①仕組みの、消費者への効果的な周知方法、普及方策は?
    • 池本氏::〈仕組を消費者に伝えていく方法についての質問を受けてネット情報主体の今は、物件情報の中にどのように簡潔なストーリーを作って、読んでもらえるコンテンツを作るか、SNSなどの一般消費者が普段使っている情報インフラに差し込んでいくかという、二つの方向しかない。最先端のものをきちんとウォッチして、コミュニケーションツールでいま何が旬で使われているか、そこにどのような広告や集客手段を入れていくかを考えるといいのではないか
    • 池本氏:〈動画を使った情報発信の方法についての質問を受けて〉5Gの時代がきて、動画が圧倒的に早くなるので、間違いなく動画は効果的だ。アメリカのポータルサイトでは、レポーターが家の中を案内している動画が普通に流れている。あなたに代わって私が家を見に行きましたという形で、うまく仕込んであって、ライブ感があって面白い。これからは1分間ぐらいの動画をどうやって上手に作れるかというのは、すごく重要だと思う。もう一つは画像加工だ。今までぼろぼろの家はぼろぼろの家にしか見せることができなかったのだけれども、元々これだけ老朽化した家が、リフォームするとこんなにきれいな家に変わるのを、VRですぐ作れる世の中になる。
    • 大島氏:最近動画をよく作る。このまちというのはこのような視点で見ると、このような楽しみ方ができるのかということを建物ではなくて、まちのビューで撮る。そうすると、自分がそこに参加できる余地が生まれる。それを先に地域の人に見せる。そうすると、うちのまちは見方によってはいいところだ、それならば、私はこれをやってみようという気持ちになってくれる。先ほど当事者意識と言ったが、これからは、巻き込みながら当事者を増やしてビジネスを拡大していかないと、ものすごくリスキーだ。動画は共感を勝ち得るためのもので、セールスではなくて共感だ。当事者になる仲間を集める動画というのがすごく大事だと思う。
    ②売却検討者へ、仕組みを訴求させるためにはどうしたらよいか?
    • 池本氏:自分の家を売ろうと思ったときに誰に売ってほしいかというと、家を建てた会社に売ってもらいたい。なぜかと言うと、その家のことを一番よく分かっているし、ずっと付き合ってきてくれたわけだから、やはりその人に売ってほしい。だから、もっと工務店が仲介業に積極的に出てほしい。きちんと物件の魅力を、文脈を紐解いて訴求してポータルに載せれば、ちゃんと問い合わせはくる。大島氏:当社はそれをずっと行っている。設計事務所だけれども、自分たちで客付けするということは、必ず、価値の最大化にとって有効な手段になる。安心感がどこから得られるかといったときに、工務店系の方が取り組んでいるということは、そういった共感の源になる。
    ③賃貸の仕組み作りに取り組む際、考慮すべき点とは?
    • 大島氏:管理会社が、管理の仕組以上に、地域社会の魅力や安心という点をある程度ルールや基準を設けて消費者に伝えていくことができないかと考えている。これから2000年代世代が賃貸住宅を選ぶ段階になると、賃貸を積極的な住環境の選択肢として捉える人が増えるはず。その点から、性能的な魅力に加えて、特に賃貸住宅の場合はまちの魅力が大事になる。
    • 池本氏:大島氏は、共用部のデザインと共用部の部分にきちんとお金をかけて、その分で専有部の単価をどこまで上げられるかということに、非常に真摯に取り組んでいる。これが、これからの賃貸の一つの価値の作り方だろうと思っている。今後、空き家率がどんどん高くなっていく世の中において、そこに力を入れていくべきだ。共用部のデザインを豊かにするということは、それがまちに対して開かれていけば、まちの効果にもつながっていくということで、それが波及効果として他の全体的な資産価値の維持向上にも、新しい入居者を集めてくる装置にもなる。ここにチャンレンジしない手はない。

4―講演要旨

令和元年度における各協議会等の取組について

株式会社ニッセイ基礎研究所都市政策シニアリサーチャー塩澤誠一郎

〈取組状況〉
  • 現在39の団体が事業を実施しており、そのうち26団体が仕組みの開発を完了させ試行を実施中。13の団体が開発中。
  • 新築住宅を対象としているものが14団体。既存住宅が34団体。新築、既存の別を問わず持ち家を対象としているのが36団体。賃貸が15団体という状況。
  • 開発対象の金融流通商品については、住宅ローンの金利優遇や期間延長といったものが多いが、中にはリバースモーゲージや残価設定ローンなどに取り組むものもある。
〈課題と方向性〉
  • 昨年度までに次のような課題が明らかになっている。①多様な出口の提案が少ない、②維持保全の実効性担保や評価につながるものが少ない、③新たな金融流通商品が少ない、④試行につながらない、⑤消費者への周知。中でも④試行につながらない、⑤消費者への周知といった課題は、今年度、多くの団体から聞かれた。したがって来年度以降も課題になるのではないか。
  • これら課題の解決方法として、売却検討者への訴求、賃貸という選択肢、買主への周知という方向性があるのではないか。
〈売却検討者へ訴求するアプローチ〉
  • 売却検討者への訴求について、今回、既存住宅を対象とする団体の多くから思うように試行物件を仕入れられないという声が聞かれた。これについては売却検討者、つまり、将来の売り主に仕組みを活用するメリットを感じさせる工夫が必要。
  • 例えば、買取再販の場合、仕入れ物件を見極める中で比較的リフォーム工事にコストがかからない物件については、より高めに買い取る。そのことをしっかりと伝える。
  • 個人間売買の場合、仕組みを活用することで買主が新築同様の性能を得られ、安心して住むことができるというメリットによって多くの買主を集めることができる。したがって比較的高く売ることができることをアピールする。このような売却検討者へのアプローチが考えられないか。
〈賃貸という選択肢で空き家所有者に流動化を促す〉
  • 賃貸という選択肢で空き家の持ち主に流動化を促すことが重要。ほぼ空き家状態の実家をすぐに売却する必要はないが、賃貸化できるのであれば家賃収入を得ながら適切に管理することができる。入居者を得ることで地域の活力維持に貢献できるということを持ち主が思うようになれば、これらの仕組みを活用しようとする対象も広がっていくのではないか。
〈買主の住宅取得行動に合わせた仕組の周知が効果的〉
  • 現地調査における試行物件購入者へのインタビューでは、いずれの購入者も試行の仕組みに満足しているとともに、仕組みを知っていれば最初からこれを選択した、この仕組みを知る人が増えれば、もっと利用者が増えるのではないかという声を聞くことができた。その意味で、将来の売り主への周知とともに買主への周知にさらに力を入れて取り組めば、その効果は十分期待できる。
  • そのためには、対象エリアでより多くの消費者が仕組みを認知する工夫が必要になってくる。そのような方法としてウェブなどでの情報収集段階で仕組みに接する機会を増やす、宅建業者の窓口など相談段階で仕組みに接する機会を増やす、その両方が重要になる。今回、話を伺った買主の取得行動からも、これらの段階で買主が必要な情報を得たことにより取得に結びついたことが窺えた。また、相談段階で仕組みに接する機会を増やすためには、仕組みに取り組む事業者を増やすことも考えなければならない。
講演❶選ばれる住宅、選ばれる街

株式会社ブルースタジオ大島芳彦氏
2000年から株式会社ブルースタジオにて「Re*innovationリノベーション」を旗印に、遊休資産の再生・価値最大化をテーマとした建築企画・設計、コンサルティング事業を開始。近年では団地再生、中心市街地再生など都市スケールの再生プロジェクトなどにも取り組む。一般社団法人リノベーション協議会理事、副会長。2016年「ホシノタニ団地」グッドデザイン金賞(経産大臣賞)受賞。家業である不動産管理会社、大島土地建設株式会社の3代目代表取締役。著書「なぜ僕らは今、リノベーションを考えるのか」学芸出版社(2019/8/10)

〈空き家は資源であり社会的共通資本〉
  • これまでに経験のない急激な人口減少に突入する。これからは、これまでに行ったことがないことをやらなければいけないという時代。
  • そのような中で、特に空き家が問題になっている。日本の住宅投資額に対する住宅資産額の差は約500兆円。国富を棄損しているという見方が多いが、空き家という形で存在していると考えれば、その活用によって、500兆円相当の空間資源を保有していることになる。つまり、空き家は問題ではなく、空き家は資源である。500兆円相当の市場規模を持つ資源と考えると、そこからはさまざまなビジネスが生まれる可能性がある。
〈空き家を積極的に活用対象にすることで、社会的な資源になる〉
  • 住宅を初めとした空間資源は、「社会的共通資本」に近いのではないか。社会的共通資本は何人たりともそれをただ自分のためにと主張できるものではなく、社会がそれを共有して資産として活用するべき存在。空き家はそういったものにも相当し、人のものだから手は触れられないものということではなく、積極的にその活用策を考えるべき対象にすることによって、社会が抱える資源になり得る。
〈住宅単体ではなく、住宅の集合体である地域に価値がある〉
  • さまざまな常識が覆っていく中で、不動産価値の本質も大きく変わってきた。不動産は権利であり、敷地そのものに価値があるとみなされてきた時代が長い。ところが、人口減少社会では、不動産価値の本質は敷地にはない。地域に価値があるという考え方になる。それは住宅単体の個ではなく、集合体が評価される時代になってきているということ。住宅単体は単純系だが、複雑系で住宅の問題を解決していこうという時代だと思う。
〈暮らしを編集する時代〉
  • さまざまな既存住宅の流通、活用を行っていると、今の生活者の感覚は家というより暮らしであると考えている。家を造るでも買うでもなく、その方の暮らしを編集する時代になってきている。
  • 区分所有マンションのリノベーションの事例。30代のディンクス(DINKsで、メッセンジャーをやっているので、郊外には住めない。けれども、電車に乗らなくていい。この方は新築のマンションを買うよりも、築35年で、目黒区という選択肢をした。その方のさまざまな優先する要素を編集していくことによって最適化された住宅を手に入れられる。このような暮らしはオンリーワンで、今までの新築か中古かという価値観とは違ったもの。
〈社会的福祉の状況にあること〉
  • 中古住宅、既存住宅と言ってもそれぞれのストーリーがある。40代と70代の二世帯三世代事例。子育ての環境や高齢者の福祉の課題を生活環境によって解決していくには近居が望まれているが、この方の場合、自分の生まれ育った家で、祖父祖父が建てた築が建てた築8080年の戸建てをリノベーションして暮年の戸建てをリノベーションして暮らしていこうという標準的なプランらしていこうという標準的なプランだだ。ただ単に建物の耐震性能や環境性能の向上だけでなく、お。ただ単に建物の耐震性能や環境性能の向上だけでなく、お互いの福祉的な生活環境も同時に満たして互いの福祉的な生活環境も同時に満たしているいる。世界保健。世界保健機構(機構(WHOWHO)の健康の定義の一つは、)の健康の定義の一つは、社会的な福祉の状況にあること社会的な福祉の状況にあること。そえ。そえは、複雑系のなせる安心、安全ということになってくる。は、複雑系のなせる安心、安全ということになってくる。ここのようなのような二世帯住宅のリノベーションはそれ以上に健康的な意義がある。二世帯住宅のリノベーションはそれ以上に健康的な意義がある。
〈リノベーションまちづくり〉
  • リノベーションとは何かというと、もう一度イノベーションを起こそうということだ。街というスケールにリノベーションという手段を施せば、マネジメントや経営といった視点が、もう一度イノベーションを起こすという発想になる。俯瞰した目線と総合的に経営的な判断で最適な手段を見いだすことがリノベーションだ
  • リノベーションという言葉とまちづくりを併せて使うことが多くなってきた。今、全国の自治体において人口減少、財源の縮小・圧迫によって公的主導の大きなまちづくりができない。小さなまちづくりを市民主導、民間主導で行っていくという方向性にシフトしてきた。
  • リノベーションまちづくりは、既存環境を使いこなして持続させる、市民主導のまちづくりということだ。空間資源ばかりがフォーカスされがちだが、人的資源が一番大きいかもしれない。文化、環境、歴史、さまざまな社会資源があるが、それを再発見して再編集する。そして、その価値を見いだし、エリアの価値を向上させていくことだ。
〈選ばれるまち誇りあるまち〉
  • これは、地方創生と関係がある。地方創生は、選ばれるまちを造っていこう、誇りあるまちを造っていこうということではないかと考える。この誇りというものは消費されるものであってはいけない。持続可能で、消費されない、当事者たちのまちであるということだ。当事者という言葉も非常に時代を象徴している。成長する時代は消費者の時代で、ビジネスは消費者を相手にしていた。ところが、今、消費者は減ってきている。さまざまなニーズがあるが、一つ一つ商品開発をしているより仲間にしてしまうということのほうが、より魅力的な生活環境、プロダクト、サービス、全てにおいて合理的であると考えられる時代だ。
〈オンリーワンの暮らしのビジョン〉
  • 共感という言葉も非常に大きなテーマではないか。当事者は、共感を呼び得る暮らしのビジョンを共有するからこそ、当事者足り得るということだ。社会的な福祉の状況にあるとは、ケアを受けられる社会ではない。共助、互助の関係が成立していることだ。それぞれの生活者が当事者として積極的な未来を見据えるためにはビジョンが必要だ。
  • 地域再生、地方創生の現場において、私どもが最初にすることは、皆さんにとって誇りは何なのか、オンリーワンの誇りとは何なのか、その再発見を試みる。その手段があり、「あなた」、「ここ」、「いま」という3点においてオンリーワンを探そうというワークショップを必ず行う。
〈脱ベッドタウン〉
  • 団地、郊外は非常に大きな課題だ。昭和30年代を皮切りにその後、宅地、団地はマスハウジングという名のもとに大量供給された。これは複雑系ではなく、個の大量供給だった。これらの団地は築年数の古いものが非常に多く、これから5年、10年をかけて問題となる団地は飛躍的に増えていく。高齢化が進み、流動性の低い郊外の団地、宅地、これをどうするか。一つ一つの住宅をリフォームして性能向上してもほぼ焼け石に水だ。団地再生というのは、大量の個の単純系を複雑系と見なければならない。まち再生として考えるということが大事だ。
  • 脱ベッドタウンという言葉をよく使う。ベッドタウンという非常に多機能なまちが日本全国につくられた。そして、仕事をする場、まちという関係があったが、複雑系という社会においては、この問題も大いに多様性という方向性を見いだすことが必要だ。
  • かつて、郊外団地とまちの関係はこのような画一的な住環境と画一的な仕事の環境があった。生活環境も仕事環境も都心部ではだいぶ多様化した。ところが、郊外はまだこのままだ。郊外のベッドタウンを脱ベッドタウンへと、さまざまな機能を持ったまちに、それぞれ個別性を見いだして考えていこうということだ。
〈賃貸住宅は地域循環を生むための装置〉
  • 典型的な5階建ての団地型の建物、これは田園都市線の人気のある駅近くにある。1960年代半ばに田園都市線が開通して、駅周辺からまず農家がこういった建物を公団主導で造った。築50年で、建て替えるかどうか考える中で、新築というリスクをオーナーが感じて相談に来た。性能向上を当然考えるが、息子に承継する課題もある。息子は高付加価値な都市型農業に転じられた。そのような方たちに「あなた」「ここ」「いま」、そして、事業承継・資産承継のタイミングで何ができるかを問う。すると、緑と織りなす里暮らしというビジョンを掲げて形になっていく。元々駐車場のあった北側は、地域の方たちも交流できるような緑地にしようと提案した。息子は畑の片隅で観葉植物を栽培していたが、この一角にポップアップのショップを設けると、よく売れるようになった。
  • 住戸の田の字プランは1LDKで40平米ぐらいだが、夫婦2人暮らし、あるいは小さなお子さんを育てる方たちがそこに住める。このような核家族というと、大体外からやってくるから地域社会と関係性がない。ただ、こういった地域の交流を持った場所であれば、地域の方とのコミュニケーションがだんだん醸成されていく。子どもが大きくなると狭くなるので、同じ地域の空き家に移住していく。このような地域循環を生むための装置として、賃貸住宅を考えていこうとしている。
〈住民同士のコミュニケーションを生むことが地域価値の向上になる〉
  • 次の事例は郊外の賃貸。駅からバスで20分ぐらいの場所だ。そのような場所に賃貸を造ること自体がだいぶ無謀だという気もするが、賃貸住宅の役割というのがある。周囲にちょこちょこと相続のタイミングのミニ開発があり、お年寄りたちと若い人たちがばらばらに暮らしている。コミュニケーションのないこの状況にいかにコミュニケーションを生むかということが地域価値の向上になる。農家であるオーナーも理由があって開発するが、ただ単に住宅を住環境、箱として考えるのではなく、地域の中でその価値を高めることを一緒に考えようとした。
  • 地域とともに育んでいく賃貸住宅を造ろうということでコモンスペースがある。賃貸住宅を造ると言うと、地域の人たちから、賃貸の住民はごみも出せなければ、町内会費も払わないと言われ、あまりいい気はしない。だが、きちんとどういう賃貸住宅ができるかを伝えるチャンスはたくさんある。上棟式やちょうど夏の盛りに現場で地域の人を呼んで、流しそうめんをする。「このような賃貸住宅を造りますので、皆さん楽しみにしてください」とオーナーさんが説明すれば、「そうか、そういう住宅ができるのか」とそこで共感が生まれてくる。
  • 出来上がった賃貸住宅は木造2階建ての長屋で、ポーチがあり、そこは専用利用できる共用部分だ。なので、普通はバルコニーなのだが、表に面していて、ここにはまちの人が歩いて来られる。そこでどういうことが起きるかというと、周りのミニ開発の子どもたちが遊びに来る。子どもたち同士のコミュニケーションがそこで生まれる。お母さんたちも近所の子どもと話をしたり、ここにベンチを出すと近い関係で話ができたりする。
  • 入居者に積極的な当事者意識が生まれており、自分が持っているものでフリーマーケットをやってみたりしている。取り立てて誰かがここでイベントを仕掛けなくてもこのようなことが起きている。こうなると、地域の方たちもウェルカムだ。いいコミュニティができたと、そのようなことになっている。リノベーションであろうが、新築であろうが、オーナーも、その地域がどう変わっていくべきかというビジョンを持ち、そのビジョンに共感する人たちのコミュニティが出来上がり、その住環境の価値が向上していくということだ。
〈生活環境に近い場所でやりたいことをする団塊世代と子育て世代をつなぐ〉
  • 次の事例は、1980年代に延伸された小田急多摩線の各駅停車しか止まらない駅前の、活用されていない鉄道用地。分譲すればそれなりにいい値段で売れる。けれども、それをすると同じことの繰り返し、40年後の高齢者が駅前に住んでいるだけになる。それを続けていくと、人口が減少していく社会においては、未来を垣間見ない愚かな判断ということになりかねない。ここの活用策として、私たちが提案したのは、この場所でなければありえない、世代をつなぐということを考えていこうということだ。
  • 80年代の開発宅地であれば、団塊世代が住んでおり、さまざまな素晴らしいキャリアを持たれて、元気に暮らしている。そういう方たちに第二創業をしていただき、子育て世代とつなぐことを考えた。里山のこの地域特有の風景の前にまたもう一度緑を再生している。木造平屋のバンガロー村のようなコワーキングスペースを設けた。なぜ設けたのかというと、生活環境に最も近い場所で自分たちのやりたいことをやるということだ。ご自宅のリビングルームでフラワーアレンジメントの教室をしたり、リタイヤした設計事務所の方が自分の家で住宅設計をしたりする方が結構いる。そういう方も手狭になってきた、あるいは、仲間たちがたくさんいるならばコワークしたいというニーズがある。ここにはカフェがあって、庭ではたき火ができる。これは郊外ならではの生活環境と仕事の環境の融合だ。ブースタイプのオフィスもあり、その周りには大体1坪から2坪ぐらいのチャレンジショップがある。周辺の主婦が自分の家では手狭だから、そこでやってみたいというニーズがある。出来上がって募集したら非常に反響が大きく、募集戸数の倍以上の応募があった。
〈暫定利用で5年、10年先の文化をつくる〉
  • 活用されない空き地を放置しておくとまちはどのような場所でも衰退していく。そこに暫定利用で活用する。リノベーションは暫定利用の考え方も実は持っている。向こう5年、10年、文化をつくるために活用していくということだ。このような形で地域の眠れる人的資源に活躍の場を与え、参加可能な場所を与え、そこに文化を根付かせ、5年、10年後に開発したらいいといったプロセスをしっかりたどっていくということだ
〈当事者として参加可能な福祉的な生活環境を作ることを意識する〉
  • 建物自体を単純系の孤立した存在と捉えること自体が、福祉的福祉の状況にない住宅ということになる。その関係性を見いだすということはまちに健康が返ってくるということだが、そのためにも当事者として参加可能な福祉的な生活環境を作ることを意識する必要がある。今日紹介した事例は全てこれを目指している。参加可能な場として再生していくという、地域の資産として活用するということだ。オンリーワンのビジョンから生まれる当事者たちによる継続的な暮らしの環境を目指すということを、この良質住宅ストックの形成というフィールドにおいても、十分考えていく必要のあるテーマかと思い、お話しさせていただいた。
講演❷良質ストックの「良質の本質」

株式会社リクルート住まいカンパニーSUUMO編集長兼SUUMOリサーチセンター長池本洋一氏
1972年滋賀県生まれ。1995年にリクルートに入社。編集部、広告営業、ブランド戦略、事業開発、新規媒体発行などを経験後、2011年よりSUUMO編集長(現職)。DIY賃貸、既存流通、地域活性、シニアの住まい、省エネルギーなどのテーマを中心にテレビ、新聞、WEBなどのメディアを通じて住宅コメンテーターとしての役割を果たす。既存住宅市場活性化ラウンドテーブル委員の他、働き方改革に伴う不動産の在り方検討会、ZEHロードマップフォローアップ委員会など国交省、経済産業省、環境省、内閣官房などで多数の委員を歴任。

〈2030年の住宅マーケットは?〉
  • 2030年のマーケットでよく語られるのは、新設着工戸数95万戸が60万戸に減ってしまうという話。着工が3分の2に減るという予測だ。しかし、もう一つ重要なのは、2030年で5%ぐらいしか減らないかもしれないものがある。それは移動量だ。新築着工でマーケットを語る時代はもう古くて、重要なのは移動量だ。移動量はそこまで減らない。
〈仕事の流動化で移動量はそれほど減らない〉
  • なぜ減らないかと言うと、シンプルに言うと結婚や出産に伴う移動量は人口が減るので減る。けれど、仕事の流動化が進んでいる。つまり、転職があり、東京から地方に転職する方も今、多数いる時代において、仕事は流動化していく。その流動化したところに当然住み替えが発生する。その辺を全部加味していくと、5%程度しか減らないと考えている。
〈ストックの有効活用において賃貸の重要性が増していく〉
  • これから伸びるのは賃貸だ。持ち家の流通ももちろんあるが、賃貸マーケットは堅調だ。特に転職に伴う賃貸、あるいは、高齢者の賃貸、こういったものは今後も堅調だと思うので、ストックの有効活用の中における賃貸の重要性というのは今後増していくのではないかと感じている。
〈良質ストックの消費者の認識を知る〉
  • 皆さんは何を買いたいですかと聞くと、やはり日本人は注文住宅が一番で、次がマンションで、その次が新築の一戸建てということで何も変わっていない。基本的にはまだまだ中古と最初に答える方はそこまで多くないという実情がある。
〈リノベーションの認知度は高く、良質ストックにはリノベーションも含まれる〉
  • ところが、聞き方を変えて、リノベーションという言葉についてはどうかと聞くと、何と96%の人がもはや知っていると答えていて、さらに52%の方々が言葉も内容も知っていて、しかも関心があり、住宅の選択肢の中に入れようかという雰囲気。言い方を変えるだけでここまでニーズが変わるということだ。
  • 良質なストックの良質の中には、必ずリノベーションによる良質なという語義も含まれているというのが1つ目のメッセージだ。
〈地方都市で中古への注目度が高まっている〉
  • 2つ目は、金沢市で、SUUMOの1物件掲載あたりのページビューが一番多い領域はどこか。それは中古マンションが1番、中古戸建が2番なのだ。新築戸建てと土地の2倍から3倍ぐらい実は見られている。
  • 新築戸建ては同じ物件が複数の会社から出ているので、1掲載あたりのビューが低めに出るという傾向はあるが、このような形でストックに対して、きちんと注目度が集まっているというデータがある。地方都市は大体同じ傾向だ。北海道など完全に車中心の社会は少しデータが違ってくるが、大体、このような傾向になる。
〈中古物件希望者は性能より見た目の良さに注目する〉
  • 女性や男性に、異性はどのようなタイプが好きかと聞くと、見た目より中身でしょうと言う。アンケートも取ると大体、このように答える。内装や外装の見た目より、私は耐震や性能を大事にしますと、このアンケートでもそのような結果が確かに出ている。皆さんもそこに対して、一生懸命改善行動を取ろうという形で良質ストック化を果たしていると思う。
  • だが中古戸建のSUUMOの検索の絞り込みのフラグで人気トップ10を並べてみると、関西の1番人気は水回り設備交換、リフォーム済み、2番が内装リフォーム済み。つまり、中古なのだけれども、リフォームされて見た目がいい見た目がいいものを探しているということものを探しているということだだ。さらに次に来るのが、首都圏。さらに次に来るのが、首都圏だとだとLDK15LDK15畳、関西も畳、関西もLDK15LDK15畳。つまり、次に畳。つまり、次に重要なのは重要なのは、部屋数ではなくて広いリビングだ、部屋数ではなくて広いリビングだということということだだ。その次にようやくリノベーション。その次にようやくリノベーションという言葉が出てという言葉が出てくるくる。。
〈見た目の良さを改善しないと注目されない〉
  • 面白いのは3日以内、本日というフラグ。これは何かというと物件の更新がいつされたかということだ。本日というのは出たばかりの物件、3日というのは3日前に出たばかりという物件で、物件の鮮度を示す。中古の物件を探している人たちは、耐震性能やエコ性能を上げさえすれば見に来てくれるというわけでもなくて、見た目の良さのようなものもきちんと改善していないと、なかなか見に来てくれない現状がある。
〈賃貸希望者は設備、内装に注目するが、入居後は遮音性能、断熱性能の改善を希望〉
  • 賃貸だと変わった傾向があって、元々駅からの距離はすごく重要なのだが、それと比べて対抗できるものは何かというと、1番が住宅設備で、2番は内装のきれいさだ。次が耐震性の高さで、断熱、省エネ性の高さは何と最下位でほぼ誰も注目していない感がある。
  • ところが賃貸に住んでから何を一番改善してほしいかというと、1番が遮音性能で、2番が断熱性能になっている。探しているときの希望と、住んでからの実感が全然違うということなのだ。つまり、入居者に部屋探しの重視条件を聞いた答えが必ずしも入居後の満足度と合っているわけではなくて、きちんとこの辺の本質をつかまないといけない。
〈断熱性能の低さが退居につながるため、長く住んでもらうためには改善が必要〉
  • 実際に、例えば、季節によって温度差が激しい、あるいは、室内でカビが発生しやすいのを感じてしまうと、2割から3割の人が引っ越しを考えている。56.3%の人はカビが発生しやすいと感じていて、19.7%が引っ越してしまうから、割合で言うとカビを見た瞬間に35%が退居する可能性があるということになる。長く住んでもらえなければ借り手がついても意味がないわけで、結局この辺を改善していかなければならないということだ。
〈性能が向上した実家を経験する20代は賃貸の性能に大きな不満〉
  • 元々住んでいた実家と、新しく住んだ賃貸とどちらのほうが、断熱性が高いかというアンケートで、40代を見ると、今の実家の支持が低くて、新しく住んだ賃貸のほうが、断熱性が高いと答えている。ところが、10代、20代になると逆転する。遮音性も一緒で、逆転する。なぜ、年代によって断熱性や遮音性についての評価が変わるのか。これは、今、若い人たちが住んできた住宅の品質が上がっているという証明なのではないかと思う。つまり、元々住んでいた実家の性能がどんどん良くなっていて、安かろう、悪かろうのままの賃貸がいまだに残っている。築浅の賃貸なのに、下手したら元々持ち家で住んでいた実家のほうがいいという評価をし始めているということだ。
〈良質ストックが当たり前になる時代、それを越えていくものでないと借りてくれない〉
  • これは結構、大きな変化だ。つまり、これから壁の薄い賃貸などを造ってしまうと、10代、20代は見向きもしなくなるということだ。昔の常識で造っては駄目という時代なのだ。良質ストックというのは、やっていかなければならないわけではなくて、良質なストックがどんどん当たり前になっていくから、その当たり前を越えていくものを造らないと人々は借りてくれない、買ってくれないという世の中に変わってきているということになる。
〈良質な賃貸ストックは長期的に競争優位〉
  • もう一つ良質な賃貸ストックは長期的に競争優位だということを言いたい。性能品質の低さが退居につながる時代である。これからストックを賃貸で貸すという取り組みもこの後、出てくると思うが、そのときにそのストックが賃貸であったら何でもよいというわけではないということだ。とにかく性能を上げた賃貸にしておかなければいけない。しかも、性能向上、特に遮音や断熱は後から工事するのは結構、大変だだ。やはり最初の段階でやっておいたほうが、効果があるということ。やはり最初の段階でやっておいたほうが、効果があるということになになるる。今まで賃貸の品質は低いから、そう簡単に追いついてこないということ。今まで賃貸の品質は低いから、そう簡単に追いついてこないということだだ。。これが、長期的にこれが、長期的に効いてくる効いてくる。。
〈住まいや住むまちに対する消費者ニーズが変わってきている〉
  • 昔は緑豊かな住宅地は、緑があって、計画的に道路も広くて、公園もたくさんあって子育てタウンとしては最高だった。ところが、今はそれが都心のマンションなどにニーズが移ってきている。あるいは、新築だけではなくて、築古でもいい、さらには、半投半住、つまり購入物件ではあるけれども、将来貸したり、売ったりという投資の観点も含めて家を買うということを若い人たちは考えているというように時代が変わってきている。品質だけでなく、立地や投資資産観点も良質なストックの本質として理解しておかなければいけない。消費者のニーズが変わってきているということだ。
〈既存住宅ビジネスの悩みと可能性〉
  • 地方のマーケット構造を踏まえて、戸建ての買取再販がどのポートフォリオで勝てるかを考えてみたい。一般的には予算が4,000万円を超えてきたら大手のハウスメーカーを検討、3,000万から4,000万円の間であれば、中堅メーカーや工務店で土地を買って注文住宅、その下に来るのが大手の建売ビルダー、大体2,000万前後から土地、建物合わせて造れる。そして、大手の買取再販業者は999万円や1,499万円でリフォーム済みの物件を提供している。
〈戸建買取再販の戦略〉
  • 買取再販はどこのセグメントに差し込んでいくのかというのが戦略上必要になってくるが、2つある。1つは、1,500万から2,000万円、性能向上させて、設備も内装も一新し、新築風の買取再販リノベを出していくという方向性だ。もう一つは、新築ではできないようなデザインだ。場合によっては、新築を超えてくるような値段にしてもいいのかもしれない。もっと、デザインも性能も高いものを造っていくということだ。
  • 実は、この2つの戦略はきちんと成果が出ていて、私は今年のリノベーション・オブ・ザ・イヤーの審査委員をしているが、今年の賞を取ったものの一つがこれに当たる。少し広めの住宅を二世帯に改修して、耐震適合まで取って、何と工事費965万円で収めたという会社がある。これは相当な努力をしており、断熱と耐震はきちんとやったというわけだ。それ以外の設備のところをいかにローコストでできるかということを徹底的に考え抜いて、設備は価格比較サイトで調達するなど、いろいろなところから情報収集して行った
  • 逆に、新築越えのデザイン、新築越えの工事費2,900万円をかけて、戸建てをリノベしたものも成功している。これは、先ほどのハイプライスゾーンで勝負をするという買取再販だ。ハウスメーカーの中古物件を買取再販しているが、あえて構造体を見せて、ソリッドな雰囲気で新築にはないカッコよさを出して新築ではないデザインで勝負する。素材感生かしたカフェデザインなどを好む人たちに向けて、無垢材を組み合わせるなどして、新築と全然違うデザインで勝負していくということもできるという例だ。
〈買取再販はユーザーメリットが多い〉
  • 買取再販のほうがユーザーメリットは多い。住宅ローン控除もフルで使えたり、あるいは2年間の引き渡し後の保証、瑕疵保険が付いたり、住まい給付金なども今であれば、最大50万までもらえる。もう一つ大事なのが耐震適合だ。基本的に旧耐震は登記費用も高いし、住宅ローン減税も使えない、住まい給付金はもらえない、いろいろなものが高い。だがこれらは耐震適合を取ればだいぶ改善される。総じていうと、耐震適合を取って、買取再販する。これが一番日本の今の税制やいろいろな制度を考えていくとお得なわけだ。これを先ほどのどのゾーンで勝負を懸けていくかということが結構重要だとだと思ってい思っているる。。
〈中古戸建再販ビジネスの困難性〉
  • SUUMO掲載ベースの物件の中での内装リフォームあり物件の比率を見ると、どんどん伸びている。内装リフォームありでSUUMOに載せている物件の多くは、恐らく買取再販だ。マンションが40%近くまであるのに対して、戸建てはまだ20に達していない。徐々に伸びているが、中古戸建の再販ビジネスはなかなか難しい。
  • 戸建ての場合は外装も直さなければいけないし、先ほどの耐震や断熱もやらなければいけないから、内装以外にかかるコストが多大だから。コストをかけたいけれども、かけてしまうと総額で新築と変わらなくなる、あるいは廉価な分譲新築一戸建てならそのほうが安いという構造的な課題がある。
  • 高くていいものを作ったとしても再販市場のどこでどう勝負を懸けていけるかというのは、そう簡単ではない。だがここに、大島さんの「いま、ここ、あなた」のようなストーリーを組み合わせて勝負しにいかなければいけないと思っています。

会場の様子

◆受付の様子
◆主催者開会挨拶
◆ニッセイ基礎研究所塩澤による各協議会の取組みの紹介
◆大島先生講演
◆池本先生講演
◆北海道R住宅ストック流通推進協議会服部氏による取組紹介
◆一般社団法人住宅流通促進協議会工藤氏による取組紹介
◆一般社団法人長寿命住宅普及協会目黒氏による取組紹介
◆静岡ストックハウス流通促進協議会大端氏による取組紹介
◆ながさき住まい価値向上促進協会楢原氏による取組紹介
◆意見交換・質疑応答
◆主催者閉会挨拶
◆会場風景

5―アンケートの結果

参加者に対するアンケート票を集計した結果、シンポジウムの内容について、「非常に良かった」、「良かった」という評価の合計は参加者の84.7%に達し、高評価でした。

参加者の職業をみると、宅建業者、建築士と工務店など不動産関係者の合計が68.5%と高く、その他、金融機関、賃貸住宅管理業者などからも幅広い参加者を得ることができました。

参加のきっかけをみると、「加盟団体からの案内を見て」との回答が約半数で、関係団体に広報への協力をいただいたことが有効でした

アンケートの自由記述をみると、次回の開催情報が欲しい、講師方の講演時間をもっと長く設けてほしいとの要望が大勢を占めています。また、各協議会の取組みの効果や消費者の需要の把握の掘り下げを期待する声も見受けられました。さらに、講演および団体発表資料提供の要望も出されています

こうした結果を踏まえて、次年度以降は、さらにテーマ設定および講師や発表団体の選定に工夫するとともに、当日の資料を早めに準備するなどの対策が必要だと考えています。

  1. アンケートの回収状況

    アンケート回収111枚(回収率91.7%、関係者除く)

  2. 参加者の職業

    参加者の職業は宅建業者(26.1%)、次いで建築士20.7%)が最も多く、金融機関、賃貸住宅管理業者なども参加された。うち、一部本事業の補助事業者が上記に該当しないと認識し、「その他」の割合も大きかった。

  3. 参加の経緯

    参加者の来場のきっかけは加盟団体からの案内(45.9%)が最も多く、当事業専用ホームページやチラシの案内も19.8%と多かった。加えて、連携した業界紙の記事掲載、ニッセイ基礎研究所のニュースリリースの効果もあった。

  4. 内容の評価
    ①第1部各協議会等の取組紹介

    「非常に良かった」26.1%、
    「良かった」36.9%で、
    満足度は63.1%であった。

    ②第1部大島芳彦氏による講演

    「非常に良かった」56.8%、
    「良かった」36.0%で、
    満足度は92.8%であった。

    ③第1部池本洋一氏による講演

    「非常に良かった」61.3%、
    「良かった」28.8%で、
    満足度は90.1%であった。

    ④第2部北海道R住宅ストック流通推進協議会

    「非常に良かった」26.1%、
    「良かった」39.6%で、
    満足度は65.8%であった。

    ⑤第2部一般社団法人住宅流通促進協議会

    「非常に良かった」25.2%、
    「良かった」39.6%で、
    満足度は64.9%であった。

    ⑥第2部一般社団法人長寿命住宅普及協会

    「非常に良かった」27.0%、
    「良かった」39.6%で、
    満足度は66.7%であった。

    ⑦第2部静岡ストックハウス流通促進協議会

    「非常に良かった」23.4%、
    「良かった」36.0%で、
    満足度は59.5%であった。

    ⑧第2部ながさき住まい価値向上促進協会

    「非常に良かった」19.8%、
    「良かった」40.5%で、
    満足度は60.4%であった。

    ⑨第3部意見交換

    「非常に良かった」36.0%、
    「良かった」21.6%で、
    満足度は57.7%であった。

    ⑩シンポジウム全体

    「非常に良かった」34.2%、
    「良かった」50.5%で、
    満足度は84.7%であった。

  5. 今回のシンポジウムの感想や意見
    • ・講師の話は倍以上の時間で聞きたかった。
      ・いくつかの協議会が査定にJAREAHASを適用するとしているが、高額の査定料を誰が負担するのか。もし、消費者であれば普及しそうにないのでは。
    • 質問ではないが、各協議会の取組紹介で「なかなか上手く行かない」話しばかりで、そもそも補助事業として意味や効果があるのか疑問に感じてしまう。結局のところ、不動産評価の仕組みや税制を見直さない限り業界の努力では難しいように感じる。その意味で、ブルースタジオさんの活動は希望を感じた。「あなたでなければ、ここでなければ、いまでなければ」な活動を支える事業を見直して欲しい。
    • 次の講演の情報はどちらから取得できますか?
    • 〈事例について〉
      社会的意義があるのは理解出来るが、その事業性についても知りたかった。
    • 講演資料が欲しかった。
    • 基本的には実需向け業者が多いと思われるが、賃貸向けに取り組む事って?そもそも賃貸向けに流れるから住宅ローンが厳しくなっている現実を把握しているのか?
    • 〈意見として〉
      案内では13:30よりスタートとなっていたが、会場に来てみると14:00スタートでした。皆、忙しい中来るのですから、案内は適切に行う事を希望します。
    • 彼ら(第二部)が考えている方向が少し違うのではないかと思います。生活/ライフスタイル(大島氏の方向が重要)
    • メンテナンスというキーワードが保険含め保証(価値)となっているが、メンテナンスとはクレームなのか?そうでないとしたら、劣化だとしたら最適なメンテナンスは後の改修工事の内容で時期見定めが変化する。その様な対応は明確化は難しいのではないか?継続的に検証して欲しい。
      独自の基準・評価は客観的に認められる内容かどうか?誰が評価するのか?ということが重要なので教えて頂きたいと思います。
    • 〈感想〉
      一般向けのセミナーではないと思っていましたので、いわゆる有名な方の講演ではなく、取組事例の話しに時間をかけるべき。もっと取組事例の詳細を聞きたかった。
    • ITがどの様なストック流通促進に貢献できるのか、プラットフォーマーとしてどの様に動かして行くべきか、で意見頂きたい。
    • 参考になるお話しが多々ありました。
      試行に活かしていきたいと思います。
    • プロジェクターに映したPPのデータをDLできますか?
    • ・3部意見交換の時間をもっと1部基調講演に充てて、もっと具体的なマーケット情報が欲しかった。話しだけでは頭に残らないと思う。
      ・分譲既存マンションの取組例の話しを聞きたかった。
    • ・大島さん、池本さんの話しをもっと聞きたかった。
      ・事例報告は資料が欲しい。
    • ・参画全体の団体一覧があれば良いかと思いました。あと、金融機関の取組がもう少し紹介出来ると良いかと思いました。
    • 講演者の資料を配付して欲しかったです。
    • インスペクションを義務化したらストックについての良質性はある程度のレベルまで上がるように思うが、今後その様になる事はあるのか?
    • 〈感想〉
      ホシノタニ団地を建築士会のイベントで見学したことがあったので一度お話しを聞きたかったです。
令和元年度